「玉ぎわに強くなる」
私が20歳代後半の頃、母校である高校卓球部のコーチをしたことがあります。都立高校で練習時間が週に3日しかなく、しかも選手はみな予選の1回戦で負けてしまうという状況でした。自慢話になってしまいますが、それを1年半で、2年連続のインターハイ(全国高校選手権大会)東京都代表選手に育てました。そのときの練習方法の一つを紹介したいと思います。卓球台を2台くっつけて1台にします。つまり、横幅が倍の広さになる訳です。そして、私がボールを送り、それを受ける練習をします。右の端から、左の端とボールを出します。とても取れないと、あきらめてしまって選手の足が動きません。私の罵声が飛びます。取れなくてもいいから食らい付いてみろ!怒鳴り声にびっくりして選手は、必死でボールを追っかけ始めます。しかし、ボールに触ることもできません。また罵声が飛びます。何回か繰り返すうちに、ラケットの先にボールが当たります。絶対に無理だと考えていた選手の意識が変わります。もしかしたら取れるのではないか、と思うようになります。それからの選手の動きは、まるで別人になったようです。ボールを打ち返すことができると信じて、ジャンプしますから自分の可能性を100%引き出します。ヘッドスライディングまでしてもボールに食らい付くようになります。このようにして、玉ぎわに強い選手作りをしました。どのスポーツを見ても、一流選手は玉ぎわに強い人です。彼等は、あきらめないのです。自分が今できる最善を最後まで尽くそうとします。一見、不可能に見えることも信じて前に進めば意外とできるものなのです。最初から無理だとあきらめてしまうから、本来持っている素晴らしい力も出さないで終ってしまっているのではないでしょうか。私達、サンワヒューマンは自分達を信じ、玉ぎわに強い人になりましょう。
山川和邦